クーラー 自作PC

【比較】簡易水冷、本当に必要ですか?基本的には空冷で十分です

昨今のPCパーツは高性能化が進むにつれて、高消費電力の傾向が強くなっている。消費電力が上がると当然発熱が増えるので、簡易水冷が選ばれることが多くなり、空冷は「ハイエンドPCでは厳しい」といった風潮が強くなってきた。しかし、その簡易水冷は本当に必要なのだろうか?力不足と思われがちな空冷の実力とその優位性を改めて考える。

冷却方式の違いと性能

冷却方法の違い

簡易水冷と空冷、名前の通り冷却方法が大きな違いだ。ただし、どちらのクーラーも、最終的には空気中に熱を放出することで冷却を実現しているのだ、ということは覚えておいてほしい。

水冷

水冷はその名の通り冷却水と呼ばれる液体に熱を移動させ、その液体でラジエーターに熱を運ぶ。簡易水冷クーラーについているファンでラジエーターに空気を送り込み、ラジエーターから空気中に熱を放出することで冷却している。

空冷

一方、空冷はヒートパイプを通して熱を移動させ、最終的にヒートシンクに移動させる。そのヒートシンクに風邪を送り込んで、ヒートシンクの熱を空気中に放出することで冷却している。

簡易水冷は高性能

「簡易水冷、本当に必要?」とは言ったものの、簡易水冷クーラーと空冷クーラーを比べると冷却性能が高いのは間違いなく簡易水冷である。

厳密には、「高性能」と一概に言うのは間違いで「高性能にしやすい」と言ったほうが正確だろう。空冷クーラーはどうしても構造やケースのサイズの都合上、ヒートシンクのサイズが制限される。しかし、簡易水冷は冷却水で熱を運ぶ都合上、ラジエーターの位置を調整しやすい。位置の調整ができると言うことは、スペースのある位置に大きなラジエーターを設置することができるのだ。

鋭い方は気付いたかもしれないが、ラジエーターのサイズが小さければ空気中に熱を放出する効率が悪いので、空冷と大差ない冷却性能のものもあるのだ。

空冷がダメなわけではない

簡易水冷は間違いなく優れているんだけど、空冷がダメというわけではない。

冷却性能

最近は空冷のCPUクーラーでも200W程度のTDPに対応しているものが増えてきている。これは2025年8月現在の最強格である8コア16スレッドのCPU「Ryzen 7 9800X3D」のTDPが120W、ユーザー報告によると160W程度まで上昇するこのハイエンドCPUを楽々冷やすことができる数値だ。

確かに簡易水冷と比べると劣ってはいるんだけど、多くのケースにおいては空冷でも十分なのだ。

車で日本の公道を走るなら120km/h出れば十分で、120km/hしか出ない車も180km/h出る車も300km/h出る車も制限速度が60km/hの道を走るならどれも必要十分。CPUクーラーも同じで、空冷クーラーでも必要十分の冷却性能を持っているのだ。

信頼性

空冷は何より壊れにくいのだ。簡易水冷がポンプ、冷却水ホース、ラジエーター、ファンと4つの部品を組み立てる形で構成されているのに対し、空冷はヒートパイプ、ヒートシンク、ファンの3つの部品。ヒートパイプとヒートシンクはくっついていて外れることは無いに等しいので実質2つと考えて良い。部品が少なければ当然壊れにくい。

簡易水冷はポンプが故障して冷却水を流す効率が悪くなったり、最悪のケースだと冷却水が漏れたりして周辺のコンポーネントにダメージを与える可能性もある。頻繁に聞く話では無いが、構造上こういった可能性は無くならない。

空冷が壊れるとしたら基本的にはファンなんだけど、ファンなんて同じサイズのものを買ってきて付け替えればOKだから個人的には壊れたに入らない。消耗品の交換と一緒だ。

値段

空冷クーラーは構造が単純な都合上、製造時のコストも低くなる。当然我々ユーザーが購入するときの価格にもそれは反映されるわけで、必要十分な性能のクーラーを買う場合、水冷と比べてコストが安上がりで済む。この浮いた分のコストでSSDなど他のパーツをアップグレードしたり、何かゲームを買うのも良いだろう。

なぜ簡易水冷が選ばれるのか

ここまで読んで「簡易水冷も空冷も必要十分なのに何で簡易水冷が人気なの?」と思うだろう。単純に「冷やす」ことにおいて両者は必要十分の性能を持ってはいるんだけど、それでも簡易水冷を買いたい理由はある。

見た目

個人の好き嫌いなところはあるけど、俺は見た目の美しさに関しては簡易水冷が上だと思ってる。

メモリやマザボの冷却

CPUだけを冷やすなら空冷で十分なんだけど、メモリやマザーボードなどCPU周りのコンポーネントを冷やしたい場合は簡易水冷の方が適していることがある。簡易水冷の場合、空冷と違ってヒートシンクが占有するスペースがないので、ファンを追加して周辺に風を当ててやることで冷やすことができるようになるんだ。

とはいえ、それが必要になるのはCPUの消費電力大きくマザーボードの冷却が追いつかなかったり、メモリの電圧をかなりの高めにしてOCしたりと、そう多くないケースの話。最近のマザーボードはCPUの消費電力を考慮して余裕のある設計がされているし、メモリも1.5V以上の高電圧で常用を狙うようなケースでない限り発熱が問題になることは無いんだ。

空冷の性能じゃ足りない

ハイエンドモデルのCPUを使っている場合や、オーバークロックで高設定を狙う場合、消費電力や発熱がかなり大きくなる。16コア以上あるCPUをオーバークロックする場合は空冷の冷却能力じゃ足りなくなることがある。そうなると簡易水冷しか選択肢が無い。

空冷の性能も上がっていて限界の性能だけ見ると簡易水冷と大差なかったりはするんだけど、現実問題ケース内のスペースの制約などで高性能のクーラーが選べるとは限らない。スペースの制約に縛られる空冷の特性上、十分な性能を持つ空冷クーラーが選択肢から外れてしまうケースも少なく無い。

まとめ

  • 簡易水冷は高性能でスペースの制約を受けない
  • 空冷の性能でも十分だが、スペースの制約で選べないケースもある
  • 簡易水冷じゃ無いとダメな理由がない限り、簡易水冷を買うのはオススメしない

俺のオススメするクーラー

空冷

SCYTHE 虎徹 MARK3

とにかく安くてちゃんと冷えて壊れない。バランスよくまとまっている定番のCPUクーラーがこれ。安いのに冷却性能も高く、ハイエンドCPUでも最高負荷の状態が続くケースでなければ冷却できる。とりあえずこれを買って様子見をして、後でファンだけより高性能のものに変えることもできるので、入門にオススメだ。

Noctua NH-U12A

空冷でトップクラスの性能を誇るNoctuaのクーラー。下手な簡易水冷よりも圧倒的に優秀で、ハイエンドCPUにも対応できる。

ヒートシンクも良いんだけど、Noctuaはとにかくファンの性能が良いんだ。回転数を落として静かに使ってもしっかり風を送り込んでくれるので静音性が高い。ガッツリ冷やしたい時に回転数を上げてもストレスを感じるモーター音や風切り音も少ない。

簡易水冷

MasterLiquid 240 Core II

Cooler Master の簡易水冷はデュアルチャンバーポンプのおかげで静音性と冷却性が高レベルで両立されていて良い。よくわからなかったらとりあえずCoolerMasterのを買っておけば間違いない感ある。

NZXT KRAKEN

NZXTの簡易水冷はとにかく美しい。クーラーのヘッド部分が液晶になっていて、CPUの温度やアニメーションを表示できる。魅せるPCを作りたい人にオススメ。

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